振動スピーカー、アクリル導光パネルに水溶性塗料、実際の雨水によって描かれた音響絵画作品。
二つの音が重なる時、片方の音によって他方の音がかき消される現象をマスキング効果という。雨音はマスキング効果によって喧騒で埋め尽くされた都市に静寂をもたらしてきた。
温帯湿潤気候の日本では年間平均降水量が世界平均の2倍以上あり、日本人は雨の恵みと災いと共に生活してきた。
雨に関係する日本語の表現は1200語以上とされるほど、日本人はその生活の中で雨の微かな情緒を感じ取ってきた。
松尾芭蕉が1687年に詠んだ『五月雨や 桶の輪切るる 夜の声』という一句がある。溜まった雨水によって桶の箍(たが)が切れそうな状況を夜の静寂として表現している。
古の時代から雨と静寂は切り離せない関係にあった。
基板・ソフトウェア設計 : 瀧本花乃介
撮影 : Kouta Nagasawa (IN FOCUS)